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あとがき
本年度の研究は、3ヶ年の継続事業として予定されている「アメニティターミナルにおける旅客案内サインの研究」の第2年次にあたるもので、昨年度の現状調査を踏まえて、必要な事項の追加調査と情報ニーズの分析を中心に行った。
調査分析をする過程で、被験者や調査員と幾度も調査駅を訪れたが、どのような障害を持つ利用者であれ、予め持っていたり空間の中で得たりする情報が行動の成立を決定づけていて、空間の中で提供されている情報の混乱がそのまま行動の混乱に直接的に影響を与えていること、つまり的確な情報設備計画を行うことが、高齢者・障害者を含めた、あらゆる利用者の円滑なモビリテイを確保することに必要不可欠な検討課題のひとつであることを痛感した。
情報設備計画のテーマは、施設と利用者のコミュニケーションを成立させるために、情報・行動・空間の三者の関係性を解くことである。土木的な空間構成と建築的なしつらいが表現している情報によって、利用者が直截的に状況を理解できるのであれば、文字や図形、音などを媒介とした意識的な情報をことさら必要とはしない。しかし現実の多くのターミナル駅は、空間的な大規模化とサービス内容の複雑化などを背景に、空間表現だけでコミュニケーションできるスケールをはるかに超えてしまっているのである。
コミュニケーションのテーマは、技術と感覚の両域にまたがる問題を内包している。感覚器官から得る情報は、意味や印象、イメージなどの複合的な情報として受容され、内部感覚で快・不快、好き・嫌い等をまじえた感覚的な価値づけを伴って、人間行動の動機に多大な影響を及ぼすからである。
情報の表現技術と受容側の感覚との関係性は、未だ解明が残されている検討課題である。
本格的な研究が求められるゆえんである。
本年度の研究によって、ターミナル駅の利用者にニーズとしてある情報内容を、どのような空間的な位置に、どのような様式で表現する必要性があるかについては、次第に明らかになってきた。
次年度では、これらに検証を加えて精度を高め、さらに情報の表現方法等の検討を行って、計画手法の輸郭をより鮮明なものにしていく必要がある。
本年度の調査分析を行うにあたって、適切なご指導を戴いた家田委員長、為国主査をはじめ委員・幹事各位に、衷心より感謝を申しあげる次第である。
(専門委員 赤瀬)

 

 

 

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